遺産分割協議と登記(遺産分割協議をした場合、どのような登記をすべきか)
2016/07/10
遺言がない場合の相続としては、法定相続分による相続と、遺産分割協議等を経て、法定相続分によらない相続があるかと思います。
今回は法定相続ではなく、遺産分割協議という話し合いによって相続分が決まった場合、どのように登記するのかというお話です。
<遺産分割協議と登記>
遺産分割協議をして遺産分割協議によって遺産の分割方法を決定した場合、相続による所有権移転登記はどのようにすればいいでしょうか?
登記の申請書には登記原因を書く必要がありますが、申請書に記載する登記原因は相続でしょうか?
それとも遺産分割協議でしょうか?
また、原因日付はいつになるでしょうか?
被相続人が亡くなった日=相続が発生した日でしょうか?
遺産分割協議が成立した日でしょうか?
どのような登記をすべきかは、既に相続登記が行われている場合と、まだ行われていない場合で登記原因と原因日付が異なってきます。
もっとも、遺産分割協議前に相続登記が行われていることはあまりないでしょうから、ほとんどの方は相続登記が行われていないことを前提に登記をすることになるかと思います。
●相続登記が行われていない場合
相続登記が行われていない場合というのは、遺産分割協議成立時に、まだ被相続人の名義のままということです。
ほとんどの場合は、こちらになるはずです。
というより、遺言がなく、法定相続分どおりではない相続登記をする場合のほとんどがこのパターンになると思われます。
この場合の、申請書の登記の目的や原因は以下のようになります。
登記の目的 所有権移転
原因 年月日相続
相続人(被相続人A) B
以下省略
原因は相続となり、原因日付は相続が発生した日=被相続人が亡くなった日になります。
典型的な相続登記であり、逆に言うと、このケースでは、オーソドックスな相続登記をすればよいということになるでしょう。
●既に相続登記が行われている場合
遺産分割協議が成立する前に、法定相続分により共同相続登記がなされている場合です。
遺産分割協議もされていないのに(つまり相続の話し合いがついていないのに)、どうして相続登記をすることができるんだと疑問を持つかもしれません。
法定相続分どおりの登記であれば、相続人の一人からの申請で相続登記をすることができますし、何らかの理由でとりあえず、相法定相続分による相続登記がなされたということも考えられます。
また、相続人の債権者だったり、相続の対象になっている不動産の担保権者だったりが代位によって法定相続分どおりの相続登記をすることもできる場合があります。
代位による登記とは、登記権利者が登記をしないときに、登記権利者に対して権利を持っている第三者が登記権利者に代わって(代位して)登記を行うというものです。
差押えや強制執行の前提として、不動産が故人ではなく相続人の名義になっている必要があるので、代位(本人たちに代わって)相続登記が行われたりするのです。
この代位による登記についても、代位原因があれば、何人かいる相続人のうちの一人の債権者が代位者となって、単独で相続登記をすることができます。
従って、相続人のだれもが知らないうちに、法定相続分による相続登記がなされているということもありうるのです。
すでに相続登記が入っている場合(すでに被相続人名義から相続人名義に代わっている場合)に、そのあとから遺産分割協議をもとに行う登記の申請書の記載は以下のようになります。
登記の目的 A、B持分全部移転
原因 年月日遺産分割
権利者 持分3分の2 C
義務者 A
B
以下省略
相続人が子ども3人、共同相続登記がなされた後、遺産分割協議によってA単独で相続することが決まった場合の例です。
日付は遺産分割協議の行われた日(遺産分割協議書の日付)になります。
また、この登記に限らず、持分移転の登記の場合、新しく所得することになる持分を冠書するのもポイントです。
●両者の違いは?
一番大きな違いとしては、最初の例のほうは、単独登記であり、所有権を取得する人だけでも登記手続きが行えるが、次の例の場合には、共同申請による登記で、上記の例でいうと、AとBが登記義務者となって、登記申請に関与しなくてはならないということです。
添付情報(添付書類)は省略しましたが、最初の例では相続登記なので登記識別情報(登記済証)は不要でしたが、遺産分割を理由とする所有権移転登記(持分移転登記)は共同申請なので、登記義務者の登記識別情報が必要になります。
なお、例えば代位による登記の場合、登記識別情報が発行されていないので注意が必要です。
このような場合は、例えば、司法書士による本人確認情報を添付することで、登記識別情報の添付なしに登記申請をすることができます。
また、あとの例では印鑑証明書は登記義務者の印鑑証明書なので原本還付できませんが、最初の例では遺産分割協議書に添付する印鑑なので、原本還付が可能というような違いもあります。
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