内縁関係の配偶者や事実上の養子が相続財産を取得することはできるか(特別縁故者の制度)
2016/08/31
内縁関係の配偶者や事実上の養子、いとこなどはそうぞ言う財産を取得することはできるでしょうか?
これらの方々は、相続人ではありません。
相続人ではないので、相続によって財産を取得することはできません。
ですので、これらの方々に財産を残したい場合には、遺言を残しておく必要があります。
では、遺言がない場合にはどうなるのでしょうか?
遺言がない場合、相続人が相続財産を取得することになり、相続人でない方が財産を取得することはできません。
では、相続人がいない場合にはどうでしょうか?
相続人がいない場合には、特別縁故者として相続財産を取得できる可能性があります。
なお、相続人がいない場合とは、現実に相続人がいない場合だけではなく、相続人の全てが相続を放棄した結果、相続人がいなくなったような場合も含まれます。
今回は、特別縁故者についてご説明して行ければと思いますが、まずは、相続人がいない場合、相続財産がどうなるのかから見ていきたいと思います。
相続人が不存在の場合、被相続人(亡くなった方)の財産はどうなるでしょうか?
相続人がいない状態で、被相続人が亡くなったとします。
この時点では、まだ、相続人不存在というわけではありません。
知られていない相続人がいるかもしれませんし、誰かが相続人として名乗り出てくるかもしれません。
相続人不存在というよりは、相続人不明という状態になります。
相続人不明のとき(相続人のあることが明らかではないとき)は相続財産は法人となります(民法951条)。
法人になるというとわかりづらいかと思いますが、財産が誰に帰属するともはっきりしないので、とりあえずは法人という形で管理されるくらいの感覚でいいのではないかと思います。
さて、法人となった相続財産(相続財産法人と呼ぶことにします)には、財産を管理する人を選ぶ必要が出てきます。
相続財産法人を管理する人がいないと、相続財産法人が宙に浮いたままになってしまうからです。
この相続財産法人を管理する人を相続財産管理人といいます。
相続財産管理人は、利害関係人等の請求によって、家庭裁判所が選任します。
相続財産管理人が選任されると、選任されたということが公告されます。
ここで相続人が現れたら、相続財産法人は成立しなかったものとみなされます。
その場合、原則として、その相続人への相続が、最初から相続人がいたのと同様に行われることになります。
公告があってから2か月以内に相続人が現れなかったときは、債権者や受遺者に対して、自分の権利について請求をするように申し出てくださいという公告が行われます。
ここで、債権者や受遺者が現れたとしたら、相続財産管理人はこれらの人に支払うべきものを支払うことになります。
相続財産を管理する人がいなかったら、こういった支払いもできないことになります。
そうした意味でも、相続財産管理人の選任は必須の手続きになるのです。
この二度目の公告期間(2か月を下回ることはできないとされています)が過ぎると、相続人がいる場合、一定期間内に権利を主張してくださいということを公告します(この期間は6か月を下回ることはできません)。
この公告期間内に相続人が現れなかったときは、相続人不存在が確定します。
相続人不存在が確定するまでには、これだけの手間と時間がかかるということになります。
逆に言うと、知られていない相続人がいるかもしれないことに対して、かなりの配慮がなされているとも言えるかもしれません。
さて、ここで、残余財産(相続財産)が残っていたらどうなるでしょうか?
特別縁故者への財産分与の審判がなされれば、、特別縁故者に財産が帰属することになります。
特別縁故者への財産分与の審判がなされないとき(申立てがなされたが認められなかったときも含む)は、共有財産であれば他の共有者に帰属することになりますし、亡くなった方の単独所有(単有)であれば、国庫に帰属することになります。
では、特別縁故者にあたるであろう人が、財産分与を受けるにはどうすればいいでしょうか?
まず、そもそも、どのような方が特別縁故者に該当するのでしょうか?
民法958条の3によると、
被相続人と生計を同じくしていた者
被相続人の療養看護に努めた者
その他被相続人と特別の縁故があった者
が特別縁故者にあたるとされています。
代表的な例としては、内縁の妻とか事実上の養子、まだ認知されていない子どもなどが挙げられます。
特別縁故者にあたり、財産分与を受けられるかどうかは、家庭裁判所の審判で決まることになります。
具体的には、家事審判申立書に必要事項を記載し、家庭裁判所に財産分与の請求をすることになります。
この財産分与の請求をすることができる期間は、先ほどあげた、何回かの公告のうち、最後の公告期間が満了してから3か月以内となっています。
財産分与の請求は、必ずこの期間内に行う必要があります。
こうした手続きを経て、最終的に、特別縁故者への財産分与が認められれば、相続財産は特別縁故者に帰属することになりますし、特別縁故者不存在が確定すれば、共有者もしくは国庫に帰属することになります。
このように、特別縁故者という制度があるので、内縁関係の配偶者や事実上の養子いった方でも、相続財産を取得できる可能性はあります。
しかし、家庭裁判所の審判によって財産分与が認められるとは限らないこと、財産分与が認められるとしても、かなりの時間と手間を要することから、これらの方々に財産を残したい場合には、遺言を残しておくべきだと思います。
<参考>
民法第958条の3
1 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2. 前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない
相続人不存在時や特別縁故者への財産分与の登記については、また次の機会に書いてみたいと思います。
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