相続登記豆知識(変体仮名)
2016/10/01
●変体仮名とは?
登記事項証明書(登記簿謄本)や戸籍を見ていると、普段見たことのない字を見かけることがあります。
よくあるのは、それが漢字であるのはわかるけれども、見たことのないものであったり、見たことのある漢字と若干異なるものであるというパターンです。
これは、漢字の異体字で、俗字とか通字と呼ばれるものなどのことです。
もう一つ、それが一見して何なのかよくわからない、漢字なのか何なのかさえわからないというものもあります。
例えば、この真ん中の字です。
この字は、一見、漢字の「志」の字のようにも見えますが、漢字の「志」ではありません。
また、「志」の異体字でもありません。
この字は、変体仮名と呼ばれるものの一つで、「し」と読みます。
上記の名前の方は、「としこ」さんなのです。
この変体仮名ですが、いったいどういうものなのでしょうか?
平仮名とは、元々は漢字を崩したものです。
かつては、元となった漢字の違いから、同じ読みの平仮名も複数存在していました。
そんないくつも存在していた平仮名の字体のうち、1900年(明治33年)の小学校令施行規則改正により、学校教育で用いる平仮名の統一が行われました。
変体仮名とは、その時、学校教育で用いることになった平仮名以外の平仮名の総称です。
平仮名が、今の平仮名に統一されると時にあぶれてしまった存在とも言えるかもしれません。
さて、そんな変体仮名が戸籍や不動産登記簿に登場するのはなぜでしょうか?
変体仮名は、学校教育で用いられる仮名としては採用されませんでしたが、その後も、人々の生活の中では使用され続けました。
勿論、名前に用いられることもよくありました。
変体仮名を使用した名前を届出ても出生届は受理されたので戸籍上も変体仮名は存在しましたし、不動産登記簿でも、所有者が変体仮名を使った名前のときは、変体仮名のまま登記されていました。
従って、戸籍や登記簿に変体仮名の名前が現れるのです。
現在ではどうかというと、そうした変体仮名の戸籍や登記簿は現在でも生きています。
かつての変体仮名の名前は、現在の仮名に直されず、現在でも、戸籍や登記簿に存在しています。
しかし、変体仮名はいずれは戸籍や登記簿から消える存在でもあります。
なぜかというと、1948年(昭和23年)の戸籍法施行によって変体仮名が戸籍上の人名に使えなくなったからです。
つまり、新しく変体仮名を使った名前の人が誕生することはなく、時の流れとともに、変体仮名を使った名前の方はゼロになるからです。
●変体仮名と登記申請
変体仮名についての説明はざっとこのようなものですが、前の所有者が変体仮名を使った名前だったら、登記の申請はどうすればいいでしょうか?
その場合は勿論、申請書等の前の所有者(登記義務者や被相続人)の欄には、変体仮名を使った、不動産登記簿(登記事項証明書)に記載されている通りの名前を書くことになります。
司法書士に登記を依頼した場合、オンラインでも紙の申請書でも、外字や変体仮名を入力できるので、通常通りWord等で書類を作成して申請することになります。
相続登記をご自身でやるという場合、通常、外字を入力できる環境にはないと思います。
そんな時は、変体仮名以外のところだけWordでさくせいして、変体仮名の所は手書きすることになるでしょう。
何と読むか、どう書くのか全く分からないときは、そこだけ空欄にして、法務局で相談して、間違いない字を書き入れることになるかと思います。
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