遺言の種類について
2024/05/13
遺言の種類について
遺言は、生前の相続対策の一つです。遺言にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴(メリットデメリット)があるので、今回は遺言の種類についてまとめてみたいと思います。なお、あまり使われることがない、秘密証書遺言や危急時遺言等については、説明を省略いたします。また、遺言ではありませんが、事実上、遺言と同じ役割を果たすことができる民事信託についても触れてみたいと思います。
遺言の種類
公正証書遺言(遺言公正証書)
自筆証書遺言
自筆証書遺言+自筆証書遺言書保管制度を利用
民事信託(家族信託)
〇公正証書遺言(遺言公正証書)
公正証書とは、公証人が作成する公文書のことです。公正証書遺言は、公証人という公務員が公文書の形で作成する遺言になります。遺言者はあくまで、遺言を口授するのみで、それをもとに公証人が公正証書を作成することになるのです。勿論、実際は、事前に打ち合わせを行なって内容を決めるのですが、民法上は、
遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が、遺言者の口述を筆記して作成することになっているのです(民法第九百六十九条の二による例外あり)。
公正証書遺言は、公証役場で保管されるので、破損や改ざんの恐れがありません。証人2人以上の立会いのもと、公証人が本人確認を行ったうえで作成されるので、自筆証書に比べて、はるかに無効になりにくいというメリットもあります。家庭裁判所の検認が不要であることもメリットの一つです。
自筆証書遺言と比べた場合のデメリットとしては、公証人の手数料が発生するため、費用が比較的高いことが挙げられます。
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
〇自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言本文の全文を、遺言者が手書きで書くことで作成するものです。民法が改正され、968条2項により、相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、その目録については自書でなくてもよいとされていますが、それを除き、基本的に、全文を手書きで作成する必要があります。
自筆証書遺言は、自書の他、日付け、氏名が記載されており、印鑑が押されている必要があります。この要件さえ満たしていれば、封筒に入っていなくても構わないですし、「遺言書」などの文書名が書かれている必要もありません。
公正証書遺言と比べた時の自筆証書遺言のデメリットとしては、遺言者の死後に遺言が見つからない場合があることや破棄・改ざんの恐れがあることなどがあります。例えば、誰にも言わずに、机の奥に遺言書をしまっておいた場合、発見されない可能性もあるし、最初に見つけた人が遺言書を捨ててしまっても、誰にも分からないという問題があるのです。
遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要なこともデメリットの一つです。
一方、自筆証書遺言は専門家に相談せずに作成すれば無料で作れますし、費用が掛からず、手間もかからず簡単に作れることがメリットです。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
〇自筆証書遺言+自筆証書遺言書保管制度を利用
「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により、令和2年7月10日より、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)にて保管する制度が始まりました。
この自筆証書遺言書保管制度を利用すると、自筆証書遺言のところでご説明したような自筆証書遺言のデメリットが解消されます。しかも、公正証書遺言に比べて安価で利用できます。
具体的に言うと、まず、自筆証書遺言でも、遺言書保管制度を利用すると検認の必要がなくなります。自筆証書遺言の最大のデメリットは家庭裁判所での検認手続きを経ないと相続手続が開始できない事ですが、このデメリットが解消されます。
また、言うまでもないことですが、自筆証書遺言のもう一つのデメリットである、遺言書が発見されない可能性がある事や破棄改ざんの恐れがある事も解消されています。遺言書が法務局で保管されるので、当然と言えば当然ですが、非常に重要なポイントです。
そのうえ、公正証書遺言のように公証人の手数料が発生しないので、公正証書遺言のデメリットである費用が掛かるという面も解消されています。
以上のように、自筆証書遺言+自筆証書遺言書保管制度を利用する方法はメリットが多いので、大いに注目されるべきだと思います。
法務局における遺言書の保管等に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、法務局(法務局の支局及び出張所、法務局の支局の出張所並びに地方法務局及びその支局並びにこれらの出張所を含む。次条第一項において同じ。)における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。以下同じ。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。
(遺言書保管所)
第二条 遺言書の保管に関する事務は、法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてつかさどる。
2 前項の指定は、告示してしなければならない。
〇自筆証書遺言+自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の注意点
いい事ばかりのように見える、遺言書保管制度の利用ですが、一つ、留意しなくてはならない点があります。遺言書を保管するにあたり、遺言書保管所(法務局)は、遺言書の内容のチェックはしてくれません。署名や日付があるか等の形式的なチェックはありますが、それ以外の内容のチェックは一切してくれません。遺言書保管制度が始まってまだ数年しか経っていないので、問題はまだ顕在化していないと思いますが、内容に問題のある遺言が作られて保管されている可能性が少なくないと思われます。
ただ、このようなデメリットは、遺言書(案)作成を専門家に依頼することで解消できると思われます。専門職に依頼するれば、当然、費用は発生します。しかし、数万円の出費を惜しんだことで、後日、遺言書の内容が実現されない等の問題が起こってしまっては取り返しがつきません。遺言を作成するときには、専門職に相談することを強くお勧めするものです。
〇遺言の新たなサービス(遺言者見守りサービス)
こうご司法書士事務所では、遺言を作成するだけでなく、遺言を作成した後のフォーローにも力を入れています。その一つが、遺言者見守りサービスです。
遺言を作成した後でも、事情や心境の変化、時には新しい制度によって、遺言書の内容を変更したいと思うこともあると思います。また、遺言執行者もお引き受けしているような場合、定期的に連絡を取り、遺言者の状況を確認しておくことが大切になります。
こうしたことから、遺言者と定期的にコンタクトをとることで、状況の変化や心境の変化が生じたことを聞き取り、場合によっては、遺言書の変更の提案をすることもできます。また、定期的にコンタクトをとることで、特に自筆証書遺言の場合に、遺言者の死亡時に遺言が発見されないという事が防げるし、遺言者に成年後見が開始したときに成年後見人に遺言の存在を告げることで、成年後見人が遺言の存在を知らずに財産の生前処分をしてしまうようなことも防げると思います。
遺言に限らず、家族信託等でもそうですが、専門職の関与は、作ったら終わり、作りっぱなしではなく、作った後のアフターフォローもしていくという流れに変わりつつあり、こうご司法書士事務所でも、「作った後」のフォローを重視していきたいと考えています。勿論、無料でフォローをすることは出来ないので、ご依頼者のご理解も必要ですが、作るだけでなく、作った後も関与し続けることを、定着させていけたらと考えています。
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