代襲相続について
2024/05/25
代襲相続とは、本来は相続人になるはずだった人が、被相続人によりも先に亡くなっている場合に、本来相続人になるはずだった人の子が、代わりに相続人になることを言います。こうご司法書士事務所では、これまで、代襲相続についても色々と書いてきましたが、代襲相続そのものについて、ご説明したり、まとめたりする機会はありませんでした。ある意味、「代襲相続」は周知の事実として、当然の前提として、相続の話を進めてきました。代襲相続自体の説明を飛ばして、相続の話をするのもよくないと思い、今回、改めて、代襲相続についてご説明する機会を作ることにしました。
代襲相続の根拠は?
代襲相続の根拠条文は、民法887条2項及び889条2項となります。887条は子が相続人となるはずだった場合の、889条は兄弟姉妹が相続人となるはずだった場合の代襲相続について定めています。
今回は、被代襲者が子である場合と兄弟姉妹である場合に分けて、代襲相続についてご説明していきます。なお、被代襲者とは、代襲される側、つまり、本来相続人になるはずだったのに、被相続人よりも先に亡くなってしまった人のことをいいます。
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
①被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
②被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
目次
子が被代襲者となる場合(孫などが代襲相続人となる場合)
民法887条2項は、相続人となるはずの子が被相続人である親よりも早く亡くなってしまった場合には、子を代襲して、孫が相続人となる旨定めています。
例えば、被相続人Xに子A及び子Bがいるが、そのうちの子AがXよりも先に亡くなってしまっている場合を考えてみます。Aには子Cと子Dがいます。ここで被相続人Xの相続人は、子Bと孫CDの合計3名となります。子Aが亡くなっている場合、子Bだけが相続人となるわけではないのです。代襲相続の結果、孫CDも相続人となるのです。
再代襲(887条3項)について
民法887条3項は、いわゆる再代襲について定めています。相続人となるはずだった人だけでなく、代襲相続人となるはずだった人も被相続人よりも先に亡くなってしまった場合には、再代襲相続が発生します。孫を再代襲して、ひ孫が相続人となるのです。
例えば、被相続人Xに子A及び子Bがいるが、そのうちの子AがXよりも先に亡くなってしまっている場合を考えてみます。Aには子Cと子Dがいます。Cも亡くなってしまっており、そのCに子Eと子Fがいるとします。このような場合、被相続人Xの相続人は、子Bと孫D、そしてひ孫EFの合計4名となります。代襲相続の結果、子Bだけでなく、孫D及びひ孫EFも相続人となるのです。
養子と代襲相続(887条2項但し書きについて)
ところで、民法887条2項には但し書きがあります。被代襲者の子は代襲相続人となれるのですが、但し書きには、被代襲者の子のうち、直系卑属でない者は代襲相続人となりない旨規定しています。被相続人の子である被代襲者の子が、被相続人の直系卑属でないというようなことがあるのでしょうか?
この887条2項但し書きが、養子が被代襲者の場合に、養子の子が代襲相続人となるかどうかの答えになっています。答えをいうと、養子の子は、産まれた時期が養子縁組の前か後かで代襲相続人となるかならないかが変わってくるのです。
具体的には、養子縁組時点ですでに生まれていた養子の子は、代襲相続人となりません。この場合の養子の子は被相続人の直系卑属にならないからです。一方で、養子縁組後に生まれた養子の子は、被相続人の直系卑属になるので、代襲相続人となります。
養子の子は、その産まれた時期により、代襲相続人となる場合とならない場合があるので注意が必要です。養子に子Aと子Bがいる場合、産まれた時期によっては、Aは代襲相続人となるが、Bはならないというように、同じきょうだいでも、相続権の有無が変わってくる場合があるのです。
※実子の養子と代襲相続(実子が被代襲者の場合)
前述の養子の例と似ているので混同しないように注意が必要ですが、被相続人Xの実子であるAがXより先に亡くなっている場合で、Aに養子Bがいる場合、養子Bは、Aを代襲してXの相続人になれるのでしょうか?
結論から言うと、被相続人Xの死亡前に養子縁組がなされていれば、養子BはAを代襲して相続人になります。
※実子が被代襲者の場合で、養子が死後離縁している場合
被相続人Xの実子であるAがXより先に亡くなっている場合で、Aに養子Bがいる場合について考えてみましたが、Aの死後、養子BがXと死後離縁をしていた場合どうなるでしょうか?
この場合には、死後離縁により、親族関係がなくなるので、Bは代襲相続人になることは出来ません。なお、死後離縁は、縁組の当事者からしかすることは出来ないので、Xの意思のみで死後離縁をすることは出来ません。
兄弟姉妹が被代襲者となる場合(甥姪が代襲相続人となる場合)
民法889条2項は、民法887条2項を準用する形で、相続人となるはずの兄弟姉妹が被相続人である兄弟姉妹よりも早く亡くなってしまった場合には、兄弟姉妹を代襲して、その子(甥や姪)が相続人となる旨定めています。
例えば、被相続人Xに配偶者や子がおらず、直系尊属も既に死亡している場合を想定してみます。兄A及び姉Bがいるが、そのうちの兄AがXよりも先に亡くなってしまっている場合を考えてみます。Aには子Cと子Dがいます。ここで被相続人Xの相続人は、姉Bと甥CDの合計3名となります。兄Aが亡くなっている場合でも、姉Bが単独で相続人となるわけではないのです。代襲相続の結果、甥CDも相続人となるのです。
兄弟姉妹と再代襲について
民法889条2項は、民法887条2項を準用していますが、3項を準用していません。887条3項は再代襲の規定ですが、兄弟姉妹の相続の場合、3項の再代襲の適用はないのです。
被相続人Xに、兄A及び姉Bがいる場合で、そのうちの兄AがXよりも先に亡くなってしまっています。Aには子Cと子Dがいますが、子DもXよりも先に亡くなっています。Dには、子Eがいます。ここで被相続人Xの相続人は、姉Bと甥Cの合計2名となります。再代襲がない結果、Dの子Eは相続人にはなれないのです。
従って、この場合には、姉Bと甥Cの2名が相続人となるのです。
相続放棄と代襲相続
相続放棄によって、代襲は生じません。例えば、被相続人Xに子A及び子Bがいるが、そのうちの子AがXの相続を放棄したとします。この相続放棄によって、Aの子Cが相続人になることはないのです。
なお、欠格事由や排除の場合には、代襲相続が発生します。被相続人Xに子A及び子Bがいるが、そのうちの子AがXの相続について排除された場合、この排除によって、Aの子CはAを代襲して相続人になるのです。
代襲相続と数次相続
代襲相続と似た概念で数次相続というものがあります。代襲相続は、被相続人よりも相続人となるはずだった人が先に亡くなる場合に発生しますが、数次相続とは、被相続人の遺産分割協議成立前に、相続人もなくなってしまった場合をいいます。数次相続と代襲相続では、相続人となる人の構成が変わります。また、数次相続の相続では、相続人の相続人全てに権利が生じるので、「再代襲がない」というような問題は生じません。
数次相続については、別の機会にお伝えします。
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