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遺言作成講座 遺言執行者を定めよう

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遺言作成講座 遺言執行者を定めよう

遺言作成講座 遺言執行者を定めよう

2024/06/02

遺言執行者について

遺言執行者とは、遺言の内容を実現させる人のことです。例えば、遺言に「預金を子Aに相続させる」と書かれていた場合でも、子Aは、単独で預金の解約手続きをできるわけではありません。通常、相続人全員の協力が必要になります。このような場合に、遺言執行者がいる場合、遺言執行者が、他の相続人の協力を得ることなしに、預金の解約や名義書き換え手続きが出来るのです。

相続人全員の協力を得る必要があるという事の意味は、遺言の内容を実現するために、遺言によって損をする相続人の協力を得る必要があるという事です。遺言執行者がいると、相続人の協力が得られなくても相続手続きが出来るという点で、相続手続きがスムーズになるのです。

(遺言執行者の指定)

第1006条

1 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。

3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

遺言執行者がいない場合どうなるか

遺言に遺言執行者の指定がない場合や遺言執行者が死亡していたり就任を辞退した場合どうなるのでしょうか。このような場合、相続人全員で遺言の執行をするか家庭裁判所に遺言執行者の選任を求めるか、いずれかの方法があります。

例えば、相続人以外への遺贈の登記や預金の解約手続きには、遺言執行者か相続人全員の協力が必要になります。

相続人以外の第三者への遺贈登記を例にとると、この登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請になります。登記権利者はもちろん受遺者ですが、登記義務者とは、遺言執行者がいれば遺言執行者、いなければ相続人全員のことを指します。つまり、このような場合に、遺贈の登記をして名義書き換えをしたいと思ったら、遺言執行者選任を申し立てて、遺言執行者の実印の押印をもらうか、さもなくば、相続人全員の実印での押印をもらわなくてはならないのです。

仮に、相続人全員の協力を得ないと遺言の内容を実現することができないとすると、遺言を遺した意味が失われてしまいかねません。

これが、遺言執行者を指定しておくべき理由です。

不動産登記法

(判決による登記等)

第六十三条 

1 (省略)

2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

遺言執行者の資格

遺言執行者には、未成年者と破産者を除いて、誰でもなることができます。専門職のような第三者だけでなく、相続人や受遺者でもなることが出来ます。実際、多くの遺言では、相続人や受遺者が遺言執行者になっています。

専門職が遺言執行者になると、遺言執行の報酬も発生しますし、専門職が遺言執行者になるのではなく、相続人や受遺者が遺言執行者となる例もたくさんあります。

従って、相続人や受遺者でもよいので、遺言で遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。

 

※少なくとも現在の制度では、相続人や受遺者が遺言執行者になることの制限はありません。しかし、相続人と遺言執行者には利益相反があるはずで、相続人の地位と遺言執行者の地位を兼ねることに問題はないのかという議論はあります。将来的な課題として、相続人や受遺者が遺言執行者になることの可否を検討する必要はあるかもしれません。

なお、今後仮に制度改正があるとしても、改正前に作られた相続人や受遺者を遺言執行者に指定する遺言が無効になることはないと思われます。

(遺言執行者の欠格事由)

第1009条

未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

 

参考改正前の条文

1009条

無能力者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

〇問題のある遺言(遺言執行者編)

財産を取得しない相続人が遺言執行者になっている

あまり例はないですが、遺言上まったく財産を取得しない相続人が遺言執行者に指定されているような遺言があります。遺言執行者の報酬も定められていません。このような場合、遺言執行者に指定された相続人はどのようなモチベーションで遺言執行者に就任するのでしょうか。遺言執行者に就任予定の方と話をし、事前に同意が出来ているのならともかく、財産を取得しない相続人や遺言の結果、損をするような相続人を遺言執行者にする場合には、十分に検討を要します。

 

配偶者が遺言執行者になっている

多くの場合を除いて、配偶者は、遺言者とほぼ同年齢であり、遺言者が亡くなるとき(遺言執行時)には、かなりの高齢になることも予想されます。ご高齢の配偶者が遺言執行者としての職務を果たせるのか、重荷でないのかは十分に検討する必要があります。

ただし、このような場合には、遺言執行者への就任を辞退するほか、専門職等に任務を委任することが出来ます。民法1016条に、遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる旨定められているからです。

 

遺言執行者が複数いる

民法1006条に、「一人又は数人の遺言執行者を指定し」と書かれているように、遺言執行者を複数人指定することもできます。そんなことあるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に私も、そのような遺言を見たことがあります。

遺言執行者が複数いる場合、遺言の執行には過半数の同意が必要となります。もし遺言執行者が2人だとすると、遺言の執行には遺言執行者全員の同意が必要になってしまいます。

そもそも、遺言執行者が複数いる必要があるのでしょうか?仮に必要があるとしても、遺言執行者が複数いると遺言執行が複雑になることは確実で、それにも関わらず遺言執行者を複数指定する必要があるのかを検討すべきだと思います。

予備的遺言執行者

まずは、予備的(二次的)遺言執行者について定めた文例をご覧ください。

(遺言書記載例)

第4条 遺言者は、遺言執行者に次の者を指定する。

住所 東京都調布市西つつじヶ丘3丁目26番地7
向後 弘之

職業 司法書士

生年月日 昭和46年8月11日生まれ
 

2 遺言者は、遺言執行者が職務の執行ができなくなった場合は次の者を遺言執行者に指定する。

住所 東京都調布市深大寺1丁目2番地3

 職業 会社員

 氏名 三鷹 一郎

 生年月日 昭和61年9月11日

予備的遺言執行者とは、遺言執行者が死亡、病気等を理由に職務の遂行が出来ない場合に、予備的(二次的)に遺言執行者になる者のことです。遺言者よりも遺言執行者の方が先に亡くなることも十分にあると思います。そのようなときに備えて、万全を期すのが、予備的遺言執行者を指定しておく理由です。

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