遺産分割協議(相続人に認知症の方がいる場合)
2025/03/26
相続人の中に認知症の方がいる場合について
相続人の中に認知症の方がいる場合の相続手続きや遺産分割協議はどうしたらよいでしょうか?
今回は、認知症の相続人がいる場合の遺産分割協議の進め方について考えてみたいと思います。
※「認知症=判断能力がない」わけではない(前提)
今回のお話の前提として、認知症だからと言って、必ず判断能力がないとか、遺産分割協議ができないわけではないことに留意する必要があります。
認知症といっても、軽度のものから重度のものがあります。また、通常、ある日突然判断能力がなくなるわけではなく、徐々に判断能力が減退していきます。調子のよい日や調子がよくない日もあります。
認知症だからと言って、必ず判断能力や遺産分割協議を行う能力がないとは言い切れないのです。
逆に、認知症の診断がないからと言って、必ず判断能力があるとも言い切れません。
ケースバイケースなのでこれ以上の詳細は避けますが、機械的に、認知症だからと言って判断能力がないと決まるわけではないことには留意しておいた方がよいと思います。未成年のように、一定の年齢未満の人は全員機械的に未成年になるわけではないのです。
なお、「認知症=判断能力がない」というように機械的に決まるものではないものの、認知症の診断が出ているほうが、判断能力がないとみなされやすいのは言うまでもありません。
ここでは、明らかに判断能力がないケースについて考えていきたいと思います。
放置も選択肢の一つ
相続人の中に認知症の方がいるケースでは、放置するのも選択肢の一つです。
これから、成年後見制度の利用や特別代理人選任についてご説明していきますが、費用と手間がかかる手続きになります。それゆえ、事情が許せば、しばらく相続手続きを放置し、認知症の方が亡くなってから相続手続きをするという選択肢も、一応はあり得ると思います。
放置を選択できるのは、当面、被相続人の預金を引き出したり、不動産を売却したりする必要がない場合に限られます。また、認知症の方が、今後どれくらいご存命可能な状態なのかも、放置を選択する際には重要な要素になります。
※相続手続き放置と相続登記義務化
2024年4月から相続登記義務化がされました。相続登記義務化について簡単に言うと、3年間相続登記を放置すると、過料が課される可能性があるのです。
相続財産に不動産がある場合、相続手続き放置を選択する際には、相続登記義務化の動きに留意する必要があるはずです。しかし、現時点では、相続登記義務化については、あまり留意すべき必要はありません。
ここでは詳細を述べるのは控えますが、現状の法務省通達では、過料が課される局面は極めて限定的で、過料が課されることは、ほぼ無視してよいレベルだからです。
過料の問題が生じるのは、早くても2027年4月以降であり、法務省の通達は変更される可能性があるので、今後も相続登記義務化の運用や通達については着目していく必要はありますが、現時点では、あまり重要な要素ではないことは間違いなさそうです。
成年後見制度の利用
認知症で判断能力がないか欠けるような場合には、成年後見制度の利用を検討します。成年後見制度の利用には、いくつかの欠点がありますが、一番オーソドックスな対策といえると思います。
成年後見制度を利用する場合、成年後見人が本人に代わり、遺産分割協議を行います。後述しますが、親族が後見人になった場合には、特別代理人を選任し、特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。
いずれにせよ、成年後見制度利用のパターンは、本人の代わりに遺産分割協議を行う代理人を選任してもらい、本人に代わり、代理人が遺産分割協議に参加することになります。
成年後見制度の欠点
成年後見制度には、プラスの側面もありますが、マイナス面も少なからずあります。
成年後見制度のマイナス面(デメリット)はおおよそ次の通りです。
一度始まったら、本人が亡くなるまで終わらない
遺産分割の方法が制限される(被後見人のために、法定相続分を確保する必要がある)
候補者が選ばれるとは限らない
専門職が選ばれると報酬が発生する
親族が選ばれた場合でも、毎年の定期報告義務が発生する
後見開始と同時か後に、監督人か特別代理人の選任も必要になる
専門職等が後見人になる場合
専門職が後見人になった場合、専門職後見人が遺産分割協議に参加することになります。
相続人でもある親族が後見人になる場合
専門職等ではなく、親族が後見人になる場合には、特別代理人の選任も必要になる場合があります。
後見人になったのが、相続人である場合、後見人自身も相続人として遺産分割協議に参加するわけですが、他の相続人の後見人としても遺産分割協議に参加すると利益相反の問題が生じます。簡単に言うと、遺産分割協議は、ある相続人にとって得することは他の相続人にとっては損になるという側面があるわけですが、そのような話し合いに、相続人という立場と相続人の後見人の立場という二つの異なる資格で参加すると、二つの立場が矛盾し、二つの立場の利益が対立してしまうのです。
そこで、このような場合、後見人は遺産分割協議に参加できないのです。
ではどうするかというと、監督人がいるケースでは監督人が本人に代わり遺産分割協議に参加します。監督人がいないケースでは特別代理人選任申立を行い、特別代理人が遺産分割協議に参加します。
なお、監督人がいないケースでは、裁判所から、特別代理人の選任ではなく、監督人の選任を指示されるケースもあるので、後見開始後に、必ず、裁判所に相談するようにしましょう。
具体的な手続きの流れ
専門職後見人が選任される場合でも、親族が選任される場合でも、まずは、裁判所指定の財産調整日基準で、初回報告を行います。東京家裁の場合、初回報告では、財産目録と年間収支予定表を提出します。
初回報告を出した後でないと、後見人として本格的に活動することはできないので、初回報告提出後に、遺産分割に向けて行動を開始します。
専門職後見人の場合
専門職後見人が就任した場合、まずは、親族との合意内容を遺産分割協議書(案)にまとめます。その内容を連絡票にて裁判所に提出したうえで、相続人全員とともに、遺産分割協議書に署名捺印をすることになります。
相続人である親族後見人の場合
相続人である親族後見人が就任した場合、まずは、裁判所に相談をすることになります。その結果、監督人を選任するということになれば、裁判所が職権で監督人を選任します。監督人が選任される場合には、監督人選任後に、監督人を交えて、遺産分割協議を行うことになります。
特別代理人選任の場合には、特別代理人選任申立の段階で遺産分割協議書(案)を提出するので、まずは遺産分割について相続人間で合意をすることからスタートします。その合意内容を遺産分割協議書(案)にまとめ、特別代理人選任申立書の別紙として添付します。
特別代理人について
特別代理人選任申立では、候補者を指定することになりますが、特別代理人に資格制限はないので、相続人以外の親族を候補者にして申し立てることが多いです。言うまでもないかとは思いますが、相続人は、遺産分割協議のための特別代理人にはなることはできません。
親族ではない第三者(主に専門職)を特別代理人の候補とすることもできます。
遺産分割協議書(案)では、被後見人に、例外的な場合を除き、必ず、法定相続分相当の遺産を取得させる必要があります。遺産分割協議書(案)がそのような内容になっていないときには、修正を求められることがあります。
特別代理人の責任
特別代理人は被後見人の代わりに遺産分割協議を行うわけですが、通常、何も考えることなく、遺産分割協議書(案)の通りの分割協議書に署名捺印することになるかと思います。
しかし、本当にそれで大丈夫なのでしょうか??
特別代理人は、遺産分割協議書(案)が妥当であるか調べなくても、責任を問われることはないのでしょうか?
この点については、後日、私見も交えて書いてみたいと思います。
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