遺留分減殺請求と相続登記
2016/10/11
遺留分とは、相続人が持っている固有の権利のようなものです。
遺留分を侵害するような遺言や贈与があった場合でも、遺留分については、相続人固有の権利として主張することができます。ただ、この遺留分の特徴として、主張して初めて実現する権利であり、何もしないでも自然に手に入れることができるものではないということがあります。
自分の遺留分を主張することを、かつては、遺留分減殺請求と呼んでいましたが、制度が変わり、現在では、遺留分侵害額請求という制度になりました。遺留分減殺請求は、財産自体を取り戻す制度でしたが、現在の遺留分侵害額請求の制度では、遺留分の請求は金銭での請求のみとなっています。
ただし、現在でも、2019年6月30日以前に被相続人が死亡した場合については、改正前の制度である、遺留分減殺請求の対象となっています。
今回は、この遺留分減殺請求と相続登記の関係について解説したいと思います。
では、遺留分減殺請求がされた場合の登記手続きはどうなるでしょうか?
具体例として、遺留分を侵害するような遺言がされていた場合を想定してみます。
この場合、下記の二つのパターンに場合分けができます。
①遺留分を侵害する相続登記がすでにされている場合
遺留分を侵害する相続登記(贈与、遺贈による所有権移転登記も含む)がすでになされている場合です。
この場合、遺留分減殺を原因とする所有権移転登記をします。
遺留分を侵害する遺言や贈与等があったとしても、その行為は当然に無効なのではなく、遺留分減殺請求がなされるまでは有効なものです。
そうだとするならば、いったん相続登記によって移転していたものが、遺留分減殺請求がなされると、遺留分権利者に財産が復帰する(移転する)と考えることができるかと思います。
従って、遺留分減殺を理由とする所有権移転登記をするわけです。
勿論、遺留分を侵害する贈与、遺贈、相続等の登記を抹消して、新たに遺留分減殺請求後の権利関係を反映した相続登記をすべきとも考えられますが、登記先例は遺留分減殺を理由とする所有権移転登記をするとしています(昭和30.5.23民甲973号)。
具体的には以下のように登記をします。
登記の目的 所有権移転
原因 年月日遺留分減殺
権利者 亡A遺留分権利者B
もし、遺留分権利者に四分の一だけ移転する場合は以下のようになります。
登記の目的 所有権一部移転
原因 年月日遺留分減殺
権利者 亡A遺留分権利者 持分4分の1 B
②遺留分を侵害する登記がまだされていない場合
遺留分を侵害する相続(贈与や遺贈)による所有権移転登記がまだされておらず、被相続人名義の登記のままの場合です。
言い方を変えると、相続(贈与や遺贈)による所有権移転登記がされる前に、遺留分減殺請求がなされた場合です。
この場合は普通に、Aから直接Bへ、相続による所有権移転登記をすることになります。
遺留分減殺請求がなされて、はじめて、遺留分にあたる財産が遺留分権利者に帰属する(復帰する)と考えるならば、相続登記をしてから、遺留分減殺請求による所有権移転登記を行うべきではとも考えられなくはないですが、そのようなことをする実益はすくないですし、遺留分減殺請求後の権利関係にもとづいて相続登記を行うという結論には問題はないのではないかと思います。
遺留分侵害額請求について
前述の通り、遺留分減殺請求の制度の対象となるのは、2019年6月30日までに起こった相続であり、同年7月1日以降の相続については、遺留分侵害額請求が適用されます。
遺留分侵害額請求は、金銭的な請求です。遺留分に相当する金銭を請求できるのみであり、かつてのように、不動産の持分移転を請求することは出来ません。従って、2019年7月1日以降の相続については、遺留分減殺請求を原因とする所有権移転登記や持分移転登記が行われることはなくなります。
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