いとこの借金を相続する事はありますか?
2025/03/09
質問の内容
いとこは6年前に亡くなっています。
昨日、債権回収業者から、「いとこのAは当社に100万円の借り入れがあり、返済がされていません。Aの相続人として、100万円を返済してください」という連絡がありました。
いとこには、妻子もいるはずです。
私がいとこの相続人になるようなことはあるのでしょうか?
参考条文(民法887条・889条・890条)
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
原則としていとこは相続人とはならない
養子縁組が絡まない限り、原則として、いとこは相続人にはなりません。
民法では、配偶者は常に相続人となること、子がいるときは子が、子(もしくはその代襲者)がいないときには直系尊属が、子も直系尊属もいないときには兄弟姉妹が相続人になることを定めていますが、いかなる場合でも、いとこが相続人になるとは記載されていません。
原則として、いとこが相続人となることはありません。従って、いとこの借金を相続することはありません。
数次相続のケース
数次相続とは、一次相続だけでなく、二次相続、三次相続というように、複数の相続が発生しているケースのことです。
今回のケースでいうと、いとこAの相続だけでなく、その次の相続も発生しているようなケースです。
今回のケースを少し事例を変えて、Aに配偶者や子がいない場合を考えています。Aには兄弟姉妹はいません。その場合、Aの親御さんがAより前に亡くなっていれば、相続人不存在となります。
もしAの死亡時点で、Aのお母さんがご存命の場合、Aの財産(借金含む)はAのお母さんが相続することになります。この相続を一次相続とします。
Aが亡くなった2年後に、Aのお母さんもなくなってしまいました。この相続を二次相続とします。
Aのお母さんの相続人は、本来、相談者のお母さん(Aのお母さんの姉)でしたが、相談者のお母さんは既に死亡していたため、相談者がおかあさんを代襲して、Aのお母さんの財産を相続することになりました。
Aのお母さんの財産には、Aの相続権も含まれるので、結果として、相談者は、Aの相続人となってしまうのです。
このように、通常、いとこが相続人となることはないはずなのですが、親族構成や亡くなる順番によっては、いとこの相続人となるケースもあるのです。
子の相続放棄の影響
今回の事例には、配偶者と子がいるはずです。子がいるのだから、いとこである自分が借金を相続することはあり得ないのではないかと思われるかもしれません。
しかし、「子がいない」とは、物理的に子がいない場合のみを示すのではありません。相続放棄の結果「子がいな」くなった場合も含まれるのです。
相続放棄をした人は、最初から相続人ではなったことになります。相続との関係では、初めから存在しなかったことになるのです。つまり、Aの子が相続放棄をすると、Aには子がいなかったことになり、次順位の相続人であるAの母が相続人となるのです。Aの母も相続放棄をすればよかったのですが、その前に亡くなってしまったり、知識不足から相続放棄の必要性を認識していなかったため、相続放棄をしないということは充分にあり得ることです。
同じことは、Aの母の相続の時にも起こり得ます。通常、Aの母の相続ではAの子がAを代襲して相続人となるはずです。しかし、Aの子がここでも相続放棄をしてしまうと、Aの母の相続人は、Aの母の兄弟姉妹(直系尊属は全員死亡しているものとする)ということになります。
そして、兄弟姉妹には代襲相続があるので、相談者の母が亡くなっている関係で、相談者が相続人となってしまうのです。
相続放棄者には次順位の相続人に連絡する法的義務はない
今回の事例を見ていただいた方の中には、なぜ、Aの子や配偶者等は、次順位の相続人等に、自分が相続放棄をした事実を伝えないのか?という疑問を感じる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、倫理的にはともかく、法的には、相続放棄をした事実を、それによって影響を受けるであろう次順位以降の相続人に知らせる義務はありません。
従って、突然、寝耳に水の形で、自分が相続人になっているという事実を知るというケースは珍しくありません。
相談者の取りうる選択肢(相続放棄)
では、相談者は、どのような対応を取りうるでしょうか?
まず、叔母さん(Aの母)の相続を放棄するということが考えられます。
基本的に、債権者から通知が来た時を起算点として、熟慮期間を考えればよいので、熟慮期間の点は問題にならないと思われますが、すでに単純承認していないかという観点には、留意する必要があると思われます。
時効の援用という選択肢
相続放棄のほか、時効の援用をする方法もあり得ます。
時効期間が満了している場合には、時効の援用という方法も採りえますし、時効の援用は相続放棄と違って、家庭裁判所に申し立てる必要はないのですし、債務の承認等を行わなければ、いつでも行えます。また、すでに単純承認してしまっている場合や、被相続人にプラスの財産がある場合でも、時効の援用は行えるので、時効の援用ができるかもしれないということは認識しておいて損はないと思います。
注意点
時効の援用には、その行為が単純承認にあたるのかという問題があります。
単純承認にあたるとすれば、相続放棄が出来なくなってしまいます。
例えば、時効の援用をしたが、実は、何らかの理由で、時効期間が満了していなかったような場合に、その後、相続放棄をすることは出来るのでしょうか?たとえば、Aの死の2年前に、A敗訴の確定判決が出ていたような場合、時効期間は満了していないはずです。
ここで、もし、時効援用行為が単純承認になるとしたら、時効援用に失敗したうえに、相続放棄も出来なくなってしまうはずです。
基本的に、時効援用には、取引履歴の開示が欠かせません。
相続放棄するにしろ、時効援用するにせよ、専門職への相談も欠かせないと思います。
----------------------------------------------------------------------
こうご司法書士事務所
東京都調布市西つつじケ丘3-26-7
アーバンフラッツMA202
電話番号 :
042-444-7960
調布で安心の相続手続を支援
----------------------------------------------------------------------