旧姓で不動産登記はできるのか?
2024/10/13
先日の自民党総裁選で、旧姓(旧氏)で不動産登記ができるのか?ということが話題になりました。
この点については、不動産登記規則の改正により、所有権の登記名義人について、旧氏を併記する制度がスタートしています。「併記することができるようになった」という事実を、ある立場から見れば、「旧姓で登記できる」と解釈することもできるし、別の立場から見ると、「旧姓で登記できない」ということになるのではないでしょうか?併記することができるようになったことをもって、旧氏(旧姓)で登記できると解釈することも不可能ではないし、旧氏を併記することはできるが、旧氏単独での登記はできないことをもって、旧氏(旧姓)での登記はできないと解釈することもまた、不可能ではないと思います。
ゆえに、どちらも不正確だともいえるし、どちらも正確だとも言えるように思います。この発言のいずれかを正確だとしたり、不正確だとするのは、その人がどちらの立場に立っているかを示してはいるものの、それ以上でもそれ以下でもないように思います。
このブログは、どちらの立場に立つものでもありませんが、今回のことにより新たな制度に注目が集まったと思われるので、旧氏併記の新しい制度について解説していきたいと思います。
目次
不動産登記規則
(旧氏の併記)
第百五十八条の三十四 次の各号に掲げる登記を申請する場合において、当該各号に定める者(当該登記の申請人である場合に限る。)は、登記官に対し、その一の旧氏(住民基本台帳法施行令(昭和四十二年政令第二百九十二号)第三十条の十三に規定する旧氏をいう。以下この款において同じ。)を申請情報の内容として、当該旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができる。ただし、当該旧氏が登記すべき氏と同一であるときは、この限りでない。
一 所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等(法第四十九条第一項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。)所有権の登記名義人となる者
二 所有権の登記名義人の氏についての変更の登記又は更正の登記所有権の登記名義人
2 前項第二号に掲げる登記を申請するに際し同項の規定による申出をする場合において、当該登記記録に同号に定める者の旧氏が記録されているときは、当該申出に係る旧氏は、当該登記記録に記録されている旧氏又は当該旧氏より後に称していた旧氏でなければならない。
3 第一項の規定による申出をする場合には、当該旧氏を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
4 電子申請の申請人が第一項の規定による申出をする場合において、その者が第四十三条第一項第一号に掲げる電子証明書(登記官が当該申出に係る旧氏を確認することができるものに限る。)を提供したときは、当該電子証明書の提供をもって、前項の市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
5 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、当該申出に係る旧氏を登記記録に記録するものとする。
第百五十八条の三十五 所有権の登記名義人は、登記官に対し、その一の旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができる。ただし、当該旧氏が登記されている氏と同一であるときは、この限りでない。
2 前項の規定による申出(以下この条において「旧氏併記の申出」という。)をする場合において、当該登記記録に当該所有権の登記名義人の旧氏が記録されているときは、当該申出に係る旧氏は、当該登記記録に記録されている旧氏より後に称していた旧氏でなければならない。
3 旧氏併記の申出は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 申出人の氏名及び住所
二 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
三 申出の目的
四 所有権の登記名義人の氏名
五 所有権の登記名義人について記録すべき旧氏
六 申出に係る不動産の不動産所在事項
4 前項第六号の規定にかかわらず、不動産番号を同項各号に掲げる事項に係る情報(以下この条において「旧氏併記申出情報」という。)の内容としたときは、同項第六号に掲げる事項を旧氏併記申出情報の内容とすることを要しない。
5 旧氏併記の申出においては、第三項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を旧氏併記申出情報の内容とするものとする。
一 申出人又は代理人の電話番号その他の連絡先
二 第八項に規定する旧氏併記申出添付情報の表示
三 申出の年月日
四 登記所の表示
6 旧氏併記の申出は、次に掲げる方法のいずれかにより、旧氏併記申出情報を登記所に提供してしなければならない。
一 電子情報処理組織を使用する方法
二 旧氏併記申出情報を記載した書面(第十四項において「旧氏併記申出書」という。)を提出する方法
7 旧氏併記申出情報は、一の不動産及び所有権の登記名義人ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産についての旧氏併記の申出が同一の所有権の登記名義人についての同一の旧氏に係るものであるときは、この限りでない。
8 旧氏併記の申出をする場合には、次に掲げる情報(第十一項及び第十四項において「旧氏併記申出添付情報」という。)をその旧氏併記申出情報と併せて登記所に提供しなければならない。
一 代理人によって申出をするときは、当該代理人の権限を証する情報
二 第三項第五号に掲げる事項を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報
9 第三十七条の二の規定は、旧氏併記の申出をする場合について準用する。
10 第百五十八条の八第一項及び第百五十八条の九の規定は、第六項第一号に掲げる方法により旧氏併記の申出をする場合について準用する。
11 令第十二条第二項及び第十四条の規定は、前項の場合において送信する旧氏併記申出添付情報(第八項第一号に掲げる情報を除く。)について準用する。
12 第四十二条の規定は前項において準用する令第十二条第二項の電子署名について、第四十三条第二項の規定は前項において準用する令第十四条の法務省令で定める電子証明書について、それぞれ準用する。
13 第六項第一号に掲げる方法により旧氏併記の申出をする申出人が旧氏併記申出情報又は委任による代理人の権限を証する情報に第四十二条の電子署名を行い、当該申出人の第四十三条第一項第一号に掲げる電子証明書(登記官が申出に係る旧氏を確認することができるものに限る。)を提供したときは、当該電子証明書の提供をもって、第八項第二号に掲げる情報の提供に代えることができる。
14 第百五十八条の十の規定は第六項第二号に掲げる方法により旧氏併記の申出をする場合について、第百五十八条の十一の規定は旧氏併記の申出をしようとする者が旧氏併記申出書又は旧氏併記申出添付情報を記載した書面(以下この項において「旧氏併記申出添付書面」という。)を送付する場合について、第五十五条の規定は旧氏併記申出添付書面を提出した申出人について、それぞれ準用する。
15 第五十七条及び第百五十八条の十四(第五項を除く。)の規定は、旧氏併記申出情報が提供された場合について準用する。
16 登記官は、旧氏併記の申出があったときは、職権で、次に掲げる事項を所有権の登記に付記する方法によって登記記録に記録するものとする。
一 登記の目的
二 申出の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 所有権の登記名義人の氏名
五 申出に係る旧氏
17 登記官は、前項の規定による記録をするときは、従前の所有権の登記名義人の氏名を抹消する記号を記録しなければならない。
18 第百五十八条の十八の規定は、第十六項の規定による記録をした場合について準用する。
(旧氏併記の終了)
第百五十八条の三十六 登記記録に旧氏が記録されている所有権の登記名義人は、登記官に対し、当該旧氏の記録を希望しない旨を申し出ることができる。
2 前条第三項から第十項まで(第三項第五号及び第八項第二号を除く。)、第十四項及び第十五項の規定は、前項の規定による申出について準用する。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、次に掲げる事項を所有権の登記に付記する方法によって登記記録に記録するものとする。
一 登記の目的
二 申出の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 所有権の登記名義人の氏名
4 登記官は、前項の規定による記録をするときは、従前の所有権の登記名義人の氏名及び旧氏を抹消する記号を記録しなければならない。
5 第百五十八条の十八の規定は、第三項の規定による記録をした場合について準用する。
不動産登記の旧氏(旧姓)併記について
長くなりましたが、不動産登記規則第百五十八条の三十四及び第百五十八条の三五を引用しました。この不動産登記規則と通達(令和6年3月27日付法務省民二第553号 )により、不動産登記のうち、所有権登記名義人に旧氏(旧姓)を併記する制度がスタートしました。
不動産登記規則第百五十八条の三十四は、これから登記する場合に所有権の登記申請と同時に旧氏併記を申し出る場合、同第百五十八条の三五は、すでにある登記記録について、旧氏の併記を申し出る場合について、それぞれ規定されています。また、第百五十八条の三十六には、旧氏併記の終了の申出についえ記載されています。
まとめ
不動産登記の旧氏(旧姓)併記についてまとめると次のようになります。
①旧氏のみでの登記はできない(旧氏はあくまで並記である)
②旧氏併記は、所有権登記名義人のみの制度である(例えば、抵当権者に旧氏を併記することはできない)
③これからする登記だけでなく、これまでの登記の所有権登記名義人を旧氏併記とする申し出もできる
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