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相続放棄と時効援用の関係

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相続放棄と時効援用の関係

相続放棄と時効援用の関係

2024/12/07

相続放棄をする際の注意点としての債務の時効

親が借金していた場合、相続放棄を検討することも少なくないと思います。

今回は、借金(債務)があるからといって、相続放棄する方が得ではない可能性がある場合として、債務の時効について考えてみたいと思います。

債務がある場合でも、最後の取引(最後の弁済や借り入れなど)から一定の期間が経過すると、時効の援用が可能となり、時効の援用をすると、債務の支払いをまぬかれることが出来ます。例えば、消費者金融からの借り入れがあった場合で、最後の弁済(取引)から5年がたつと、時効の援用が可能となります。

そして、時効の援用は、債務者本人だけでなく、相続人もすることが出来ます。

従って、債務がある場合でも、時効期間が経過していれば、時効の援用をすれば債務の支払い義務がなくなり、結果、相続放棄をしなくて済む可能性が出てきます。

借金がある場合でも、プラスの財産がある場合、借金について、時効の援用は可能なのか検討することは重要です。それなしに、相続放棄してしまうと、後悔することになりかねません。

(法定単純承認)

第921条

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

時効の援用と法定単純承認

相続放棄のときに、時効援用の可能性を頭に入れておく必要がある一方、被相続人の債務につき、時効援用をする場合には、「法定単純承認」について留意しておく必要があります。

法定単純承認とは、簡単にいうと、通常相続人でないと行わないような行為をした場合には、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄が出来なくなるということです。

時効の援用は、相続人でないと行わない(相続を承認しないと行わない)ものであるので、時効の援用をすると、法定単純承認とみなされ、相続放棄は出来なくなると考えられるのです。

少なからぬ方が、ここまで話の意味が分からないかもしれません。時応援用したら、債務はなくなるのだから、相続放棄ができなくなっても不利益はないとも思われるからです。

しかし、実は、深く考えずに時効援用をすると、とんでもないことが起こる可能性があるのです。

「時効の更新」という問題

通常、時効期間は5年(改正前の民事債権は10年)です。しかし、時効には、時効の更新(時効の中断)という概念があります。時効の更新とは、裁判上の請求や債務の承認があると、時効期間はいったんゼロになり(振出しに戻り)、そこから、また、一定期間が経過しないと、時効の援用が出来なくなるというものです。

この時効の更新があるために、債務の承認があった場合、そこから5年、確定判決があった場合はそこから10年経たないと時効は完成しなくなってしまいます。

相続人が行う時効援用で問題になるのは、被相続人につき、時効の更新事由が発生していたのに、それを知らずに時効の援用をしてしまうような場合です。例えば、被相続人が死亡直前に債務の承認をしていたとか、8年前に債務の支払いを命じる確定判決があったのに、それを知らずに時効の援用をしてしまった場合です。

このような場合、時効援用の意思表示をしても、債務はなくなりません。

では、「時効援用がダメだったから相続放棄しよう」というのは可能なのでしょうか?

それが、時効の援用と法定単純承認の問題なのです。

再度、時効の援用と法定単純承認について

時効援用の意思表示をすることが、法定単純承認にあたる可能性が極めて高い事は既にふれたとおりです。とするならば、時効の更新等の理由で、時効援用が不発に終わった場合に、次の策として相続放棄をすることは出来ない事になります。その結果、親の債務を引き継ぐことになってしまいます。

もちろん、時効援用をせずに、最初から相続放棄を選択していれば、相続放棄が出来た可能性が高いわけです。時効援用をするという方針が裏目に出てしまったのです。

では、どうしたらよいのでしょうか?

方針決定前の財産調査の重要性

相続放棄や時効援用の意思表示の前に、マイナスの財産を含む財産の調査をすれば、間違いをなくすことが出来るはずです。債務については、取引履歴を取り寄せるなどして、本当に時効期間が満了しているのかを調べることが大切です。古くからの債務であれば、引き直し計算の結果、債務の額が減ることや過払い金が生じる事さえあるかもしれません。

それはともかく、債務を調査し、問題なく時効期間が満了していることを確認のうえ、時効の援用を検討すれば、間違いは生じなくなります。

この債務の調査は非常に大切です。

調査を行わずになされる時効援用は危険である

何が何でも放棄したいというような場合の相続放棄はともかく、時効援用については、調査(取引履歴の開示請求)を行ったうえで行うことが極めて重要です。しかし、調査をせずに、時効援用を行った結果、想定外の結果が生じるというようなことは珍しい事ではありません。

被相続人の債務だけでなく、自分自身の債務も含め、時効援用には債務の調査が必須であることを改めて書いて、結語とします。

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