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相続登記義務化とこうご事務所のスタンス

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相続登記義務化とこうご事務所のスタンス

相続登記義務化とこうご事務所のスタンス

2024/12/14

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。過料が科されるのは早くても3年後からなので、まだ、どのような運用がされるのか未知数な面もあるのが正直なところです。

実は、不動産の所有者が亡くなっても、相続登記をしないでそのままにしておくケースは珍しくありません。不動産登記は義務ではなかったし、子孫が住むためとか、農地で農耕を営むとか、不動産を通常使用するためには、故人名義のままでもあまり問題はなかったからです。

実は、義務化以降も、現在予定されている運用を前提にするなら、相続登記義務化によって、劇的に制度が変わるという事はないと思います。

今回は、この相続登記義務化についての当事務所のスタンスをまとめるとともに、改めて相続付き義務化について解説してみようと思います。

なお、これまで、当事務所では、相続登記義務化について、いくつかの文章を書いてきたので、ご参照頂ければと思います。

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

(過料)

第百六十四条 第七十六条の二第一項若しくは第二項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

※条文の一部を抜粋

目次

    相続登記義務化とは?

    相続登記義務化とは、

    不動産登記法第七十六条の二による相続登記の義務化(所有権の移転の登記を申請しなければならない。)

    同第百六十四条が定める過料というペナルティ(申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。)

    の二つからなる内容を指します。

    法律上、「義務」があるされることがらでも、単なる努力義務が定められているだけでは、あまり意味がありません。義務を果たさなくても罰則がないからです。この点、今回の相続登記義務化では、義務を果たさなかった時のペナルティとして、10万円以下の過料に処せられることになっています。

    ここに大きな意味があります。相続登記義務化は、義務を果たさなかったときでも何のペナルティもない単なる「努力義務」ではありませんが、一方で、義務を果たさないことが犯罪になるようなことではありません。

    なお、過料とは、「科料」ではないので注意が必要です。 両社は似て非なるもので、「科料」が刑罰であるのに対し、「過料」は刑罰ではありません。 「過料」とは、行政上の義務違反に対して科されるペナルティ(金銭的な罰)のことを意味しています。

    (不動産に関する物権の変動の対抗要件)

    (物権の設定及び移転)

    第176条

    物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

    第177条

    不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

    そもそも不動産登記は対抗要件に過ぎないはず

    日本の民法上、所有権を取得した場合に、登記をすることは義務付けられていませんし、登記をしなければ所有権を取得できないわけでもありません。ただし、登記をしないと第三者に所有権などの自己の権利を主張することは出来ません。登記は、効力発生要件ではありませんが、対抗要件になるのです。登記をしなくても、当事者の意思により所有権を得たり、失ったりという効力は発生するのです。

    そして、対抗要件を具備(取得)するかは、当事者の自由なのです。

    相続登記義務化でもこの原則は変わらない

    相続登記義務化後も、相続登記をしないことのペナルティとして、所有権を失ったりはしません。あくまで、今までの制度を前提として、相続登記に限り、一定の場合に、科料に処せられる可能性が生じただけであることは抑えておく必要があると思います。

    今すぐにペナルティが発生するわけではない

    不動産登記法上、相続登記は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内」に行うことが義務付けられています。逆に言うと、3年以内に行えばよいということになります。今すぐに登記しないとペナルティがあるわけではありません。

    正当な理由があれば、過料は科されない

    相続登記義務化以降も、正当な理由があるときには科料に処せられることはありません。法務省によると、正当な理由がある場合とは次のような場合とされています。

    ・相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
    ・相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
    ・相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
    ・相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
    ・相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

    正当な理由があれば、過料に処せられることはないことも重要なポイントです。過料を恐れて、遺産分割協議で不本意な妥協をして、早く登記をしたりする必要はないのです。

    通達(法務省民二第927号)の存在

    現時点で、相続登記義務化についての最新の通達は、法務省民二第927号(令和5年9月12日)になります。

    「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係 (通達)」より、一部抜粋(筆者により、一部太字にしています)

    2 登記官が申請の催告を行う端緒

    登記官は、次に掲げるいずれかの事由を端緒として、改正不登法第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとする。

    ① 相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

    ② 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき

    通達を前提とする限り、過料に処せられるケースはほとんどないはず

    通達では、過料前のステップである催告について、端緒(きっかけ)とされているのは、二つのケースしか示されていません。この二つの事柄をきっかけとして、登記官が義務違反者の存在を知った時に限り、催告が行われ、それ以外のケースで催告が行われることはないのです。そして、過料に処す前には必ず催告が行われるので、催告が行われなければ、過料が科されることもないのです。

    通達に示される端緒

    遺言書を添付して特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合で、遺言書に記載されている他の不動産の所有権の登記申請がされなかったこと

    遺産分割協議書を添付して特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、遺産分割協議書に記載されている他の不動産の登記申請がなされなかったこと

    更には、「当該相続人」という言葉も書かれています。これが意味することは、例えば、ある遺言に、「相続人AにX不動産を、相続人BにY不動産を相続させる」と記載されているような場合で、相続人Aのみが登記申請をし、相続人Bが登記申請をしなかった場合には、相続人Bに事前催告はされないということです。一方、「相続人AにX不動産及びY不動産を相続させる」と記載されているような場合で、相続人AがX不動産については登記申請をしたが、Y不動産については登記申請をしなかったような場合に催告がなされると読み取れるはずです。

    事実上、このようなケースは極めて限定的であるはずです。はっきり言ってしまえば、通達を前提とする限り、相続登記をしなくても、過料に処せられることはほとんどないと思われるのです。

    通達は通達でしかないことに注意

    ここまで書いてきたことは、全て、法務省民二第927号通達を前提としています。通達は非常に重要なものですが、新たな通達が出る可能性もあるので、その意味で、通達は通達に過ぎないという事は抑えておくべきかと思います。言い換えると、過料を積極的に科していくような新たな通達が出ないとも限らないからです。

    現時点で、過料に処せられるケースはほとんどないだろうと思われますが、通達一つで、簡単にひっくり返ってしまう可能性はあるのです。何しろ、法律上は、端緒が限定されたりはしていないのですから。

    相続人申告登記(相続人である旨の申出の制度)を利用すれば、過料は科されない

    更には、相続登記義務化と同時に、相続人申告登記制度も開始されます。この制度は、自分が相続人であるという事を申し出る制度ですが、この制度を利用すると、相続登記をしなくても、相続登記申請義務を果たしたことになります。

    どうしても不安な場合、相続人申告登記をしておくことも考えられます。

    ただし、当事務所としては、過料に処せられる場面が限定的である以上、相続人申告登記はあまりお勧めしていません。

    相続登記自体は非常に重要である(相続登記義務化とは別次元の問題)

    以上のように、相続登記義務化は、必要以上に気にすることがないというのが私の考えです。

    しかし、相続登記自体は重要です。

    自分の権利を公示したり、第三者に対して主張しておけるようにしておくことは重要です。例えば、売買により不動産を購入した場合に、登記は対応要件に過ぎないから、所有者を自分に変更する登記などしなくてよいと考える方はどれくらいいるでしょうか?相続登記もまた、同様だと思います。

    更には、相続登記をしないで放置しておくと、極めて困難な状態になりかねません。子、孫、ひ孫と代が変わっていくごとに、当事者(権利者)の数は増えるはずです。そして、相続権利者の中に、行方不明者、日本国籍離脱者、相続人無くして死亡した者などが現れると、手間とお金の問題(費用対効果の面)から、事実上、解決が困難になるような場合もあります。

    出来ない妥協をしてまで相続問題を解決しなくてはならないとは思いませんが、相続問題を安易に放置する事は避けたほうがよいと思います。

    相続登記義務化についての当事務所のスタンス(まとめ)

    相続登記義務化を過度に意識しない

    相続人申告登記については、相続登記義務化についてご説明し、それでも、報酬を支払っても行いたいという方のみお引き受けする

    相続登記義務化とはかかわりなく、相続登記自体は極めて重要である

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